2016年08月28日
実は面倒なことが起こっていたのですが、近い将来の状況が読めなかったので、公表を控えていた事実を報告します。ご存知の方もおられるかと思いますが、有名な色ガラス製造会社、ブルズアイ、ユロボロス、ノーススター、トラウトマンアートガラス、グラスアルケミー、の5社が、オレゴン州ポートランド市に集中しています。
2013年にオレゴン州政府がポートランド市の樹木に付着した苔を採集して検査したところ、ステンドグラスなどで有名なブルズアイ社の工場付近で、ヒ素とカドミウムの含有量が自然より高い数値を示しました。含有量が基準以内だったため問題とはしなかったのですが、今年の3月にポートランド市のミニコミ紙マーキュリーが、この問題をセンセーショナルに取り上げ、あたかも健康に深刻な被害が出るかのような記事を掲載しました。
まず、ブルズアイが批判の矢面に立ちました。ブルズアイは、即時、過去に遡ってヒ素の使用を否定。カドミウムも他の発生源の可能性を調べるよう要請しましたが、近隣の住民が反対デモを行ったり、損害賠償を求める集団訴訟を起こしたりしました。
これに対し、我々ボロ業界は息を潜めて静観していたのですが、まずオレゴン州政府が動きました。知事の命令で、今年の9月30日までに、色ガラス工場の排気を高度に浄化する装置の設置を義務付ける仮処分を下したのです。排気浄化装置の設置がない場合は、10月1日以降、9種類の金属を含む色ガラスの製造を禁止するという厳しい決定です。
このため、色ガラス各社は、一斉に9種類の金属を含む色ガラスの生産を停止しました。9月30日までは生産できたのですが、住民からの訴訟を恐れた各社は足並みを揃えたのです。
スタモリはこの情報をいち早く察知して、対象となるボロの色ガラスを米国から集めました。しかし、その量は多くありません。アーチストがパニック買いをすれば、いっぺんに無くなってしまいます。在庫が無くなってしまう状況は避けたいところです。
現在のところ、対象となっているボロガラスは、カドミウム系とクロム系の色ガラスです。
この難問題に対処を急ぐ各社の中で、偶然というか事前に設置準備を行っていたノーススター社が、近く浄化装置を完成させます。本格的な浄化装置の稼働予定は10月です。
タグ(トラウトマンアートガラス)は来年の春に完成予定です。これに対し、グラスアルケミーはさらに遅れると予想しています。
以上の状況をご理解いただき、できれば、クレヨン系(カドミウム系)、および銀ラメ系(クロム系)の色ガラスは、安定供給が期待できるノーススター社の製品をお買い求めいただけるようお願い申しあげます。
他社の色ガラスで在庫が少ない場合は、ご注文いただいても、ご希望の注文量を販売させていただけないことが多々あるかと思います。ご理解お願いいたします。
なお、米国で問題になっているのは、各種の薬品を混ぜて高熱で溶解するガラス製造時に発生する排気が対象です。つまり、完成した色ガラスをバーナーで加工する際に発生する排気中の金属はほとんどゼロに近く、身体と健康に対する心配は不要です。
酸素バーナーの高温の炎から発生するガスは、主に二酸化炭素と窒素酸化物です。この両方のガスは屋外へ排出する必要があります。ダクトだけでは排出が不十分ですので、できれば、換気扇で強制排気をお願いします。また、換気扇は、部屋の反対側に十分な大きさの空気取り入れ口が無い場合は有効に働きません。強力な換気扇を設置しても、部屋の反対側から新鮮な空気の供給がないと、十分に排気できないということです。この点はとても大切なことですので、お気をつけください。
換気に関するご質問は、いつでも当方まで、お気軽にメールまたは電話でご相談下さい。